青森市の歯医者「ミドリデンタルクリニック」工藤瑞恵です。
「小児矯正と成人矯正の…」というご質問をよくいただきます。
簡単に分類すると2つに分かれています。
小児矯正と成人矯正の基本的な違い
小児矯正はお子さんの成長に合わせて矯正が叶うため大事な歯の抜歯をできるだけ避けたいとお考えのご家族向きの矯正治療です。
成人矯正は顎の成長がすでに止まっているため歯を並べるスペースを確保するために抜歯を要する可能性が高い矯正方法です。
子供の顎は個人差、男女に差はありますが大体10歳までに80%成長します。つまり10歳までに顎の成長が決まります。
抜歯を最大限に防ぎ健康的な歯列矯正を行うための小児矯正は顎を10歳までに理想の発育量に戻す必要があります。歯が並んでいないのは、歯を並べるためのスペースの確保が叶っておらず、顎の理想の発育量に足りていない状況のため、発育を促してやる必要があります。
その発育を促すための矯正が「小児矯正」です。
主要な違いのまとめ
主要な点をわかりやすくまとめますと、
基本的な違い
- 成長の有無:小児は顎骨が成長中なので「骨の成長を利用した治療(成長修正)」ができる。成人は成長が止まっているため、歯や骨を動かす範囲に限界があり、場合によっては外科(顎変形症手術)が必要。
- 治療目的:小児は咬合の誘導・成長方向のコントロール(将来の問題を予防・軽減)が中心。成人は咬合改善と審美・機能回復が中心で、既存の歯周状態や補綴との兼ね合いが重要。
使用できる治療法・装置
- 小児:プレオルソ、拡大床と呼ばれる咬合誘導・拡大装置等を用いて、成長促進、抑制を行います。治療方法にはヘッドギアなども用いられる場合もございます。
- 小児矯正で早期介入→成長後に成人矯正で最終仕上げを行う再治療という二段階があります。
- 成人:ワイヤー矯正(表側・裏側)、マウスピース型矯正装置(インビザライン等)、矯正用アンカースクリューを使った治療、必要なら顎矯正手術(外科矯正)をご提案する場合がございます。
治療期間・効果
- 小児:早期介入にて短期間で是正できる問題もあります。しかし包括矯正は成長終了まで待つこともあるため、小児矯正期間中に矯正装置を外して顎の成長を自由に解放し、その動向の経過観察を続けタイミングを見計らって矯正治療を再スタートする方法などがあります。トータルでは12〜36ヶ月程度が一般的ですが状況によっては60ヶ月に及ぶ場合もございます。成長に合わせて行なっていく小児矯正は個人差が大きのが特徴です。
- 成人:動きが遅くなることがあり、一般的に12〜36ヶ月。外科併用ならさらに長期化することもあります。
矯正治療はそれぞれの顎、歯の形などがからむため友人と同じような 症例に見えても治療期間や治療方法に個人差が出ることを理解した上でスタートすることが必須の治療になります。
審美・生活面の違い
- 成人も小児も現代社会では見た目や仕事上の都合で目立たない装置(クリアアライナー、目立たないワイヤー矯正装置)を希望するケースが多く、若年層の方にはカラーゴムのワイヤー矯正も人気です。
- 小児矯正は取り外しが可能な矯正装置がメインになります。そのため給食や体育の時間の矯正装置の管理を担任教師に依頼するなど装置の管理も課題になります。多くの患者さんが無理なくこなしてきたので特に心配は要らないのでご安心ください。
要点の簡潔なまとめ
- 小児矯正:成長を利用して咬合や顎の発育を誘導・修正し、将来の不正咬合を予防・軽減することが主な目的です。早期介入が有効なケースが多く、欧米諸国では歯並びが社会的地位を表すため矯正治療は小児矯正からスタートし、成人矯正で最終調整を行うのが主流。
- 成人矯正:成長が終了しているため歯の移動が中心となります。審美・機能回復が目的で、歯周状態や補綴計画、場合によっては抜歯などの外科的介入が重要です。
- 小児:顎骨が成長段階にあり、上顎拡大、成長方向の修正などで健康的な矯正治療を叶えることが可能です。
- 成人:顎骨の成長はほぼ終了しているため、骨格的不正は抜歯などが必要になることがあり健康な歯を失う可能性が高いです。
小児矯正と成人矯正の目的・装置・リスク
小児矯正は
- 小児:咬合誘導、成長のコントロール、習癖(舌突出・指しゃぶり)改善、将来の抜歯や外科を回避することが狙いで行います。そのため小児矯正のみで歯がきれいに並ぶかどうかは個人の顎の成長によることから成人矯正も視野に入れてスタートが必要。
成人矯正は
使用できる装置
- 小児:拡大装置、プレオルソンなどの機能回復装置、ヘッドギア、部分矯正など。
- 成人:ワイヤー矯正(表側・裏側)、インビザラインマウスピース型、矯正用、外科(抜歯など)併用など。
リスクと配慮
- 小児:ご家族の協力が必須です(管理、清掃など)、萌出中の歯の扱いが重要です。身長が一体何センチまで伸びるかが予測不可能なのと同様顎の成長予測は不確実なのでご家族による経過観察と定期的な来院は必須です。
- 成人:歯周疾患や既存補綴物への配慮は重要なポイントです。
患者側の制約(審美性・社会的要因)
- 小児:学校生活や習い事で親御さんや担任教師による管理が必要とされます。上記にも記しました通り、小児矯正の主な装置は自ら取り外しが可能な矯正装置です。矯正生活に慣れてくると給食を食べる際に矯正装置を外して食事をし、そのまま残飯と共に矯正装置を処分してしまったなどはよくあるお悩みです。
- 成人:マウスピース型矯正装置インビザラインをご利用の患者さんにおいては会合などが多い場合に規定の装着時間が守れず矯正期間が伸びてしまうなどのお悩みはよく聞かれます。
まとめ
長々と書き連ねましたが、小児矯正は歯の抜歯を防ぎ健康的に並べるためには必須の矯正方法です。
「前田郷敦さん」のようなきれいな歯並びアーチが大切なお子さんのお口元に叶えられたら審美的にも美しく、健康的で、世界中どこに行っても社会的地位を保てる一生物のプレゼントになると言えます。
ぜひ、たかが見た目と侮らず、お子さんの健康を見据えた世界標準の価値観で歯並びについてご家族でご検討いただけたら幸いです。