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青森市の歯医者「ミドリデンタルクリニック」工藤瑞恵です。
他院さんより店員の患者さんの初心ヒアリングでのお話しです。
インプラントをやって後悔しているというので、どうしたのかな?と思いながらお聞きしていました。
数年前に歯根嚢胞で左下奥歯を失い、当時通っていた医院さんでインプラントにされたそうです。
「歯根嚢胞(しこんのうほう」とは、歯の根の先に生じる良性の袋状の疾患です。歯科では頻度の高い病気の1つです。根尖性歯周炎が進行して海が袋状に溜まることで発症し、顎の骨の中に生じる嚢胞の半分以上を占めます。歯髄(俗称:神経)を取った歯にのみ生じ、初期の段階では自覚症状がなく大きくなっていくため痛みを感じることはあまりありません。歯医者さんに行ってレントゲンを撮ってみるとたまたま見つかるというケースがほとんどですが歯茎から膿が出ていたり歯茎が痛むということもあります。
また「根尖性歯周炎」とは、虫歯が進行し、歯髄に(通称:神経)に感染が起こり、それが歯根の尖端に波及すると生じる歯周炎のことで、根尖性歯周炎が慢性化すると歯根嚢胞ができる原因となります。
さて患者さんのお話に戻りましょう。
数年前にインプラントにした奥歯について最近になって1番奥の歯はなくても大丈夫という情報を耳にされたそうです。
その情報を耳にして、辛い、放置でいいならインプラントなんて選択しなければよかった、そしてインプラントについて、老後インプラント歯周炎にでもなったら痛みで苦しむしかないなんて苦しいことしかないとのお悩みを吐露されたのです。
歯科のプロとして申し上げたいのは、奥歯がなくても大丈夫なんてことはありません。本当になくてもいいのなら人間に限らず、生命の進化の過程においてすでに奥歯の存在はないのではないでしょうか?
奥歯がなくて大丈夫なんていうデマを誰が流したのか?気になります。
「奥歯」は毎日に欠かせない大事な歯です。どうしても見た目の観点から「前歯」ばかりに気が入ってしまいますが、「噛む」役割についてとっても重要なのは「奥歯」です。
「奥歯」を1本失うと噛む力の30から40%が低下します。食べ物の消化・吸収も同様に悪くなります。食べ物の消化・吸収が悪くなれば栄養不足による全身の機能低下や、「吸収不良症候群」下痢、体重減少などの症状が現れ、慢性的な下痢、体重減少、全身のむくみ、貧血、口内炎、脂肪便(浮くのが特徴)の排出、腹部膨満感、ガス。合併症では打水症状、電解質の異常、骨粗鬆症、免疫機能の低下を引き起こします。
また、歯を失うと歯を失ったところから息が漏れてしまうので発音が不明瞭になります。
お笑い芸人の方はM1優勝などで売れるとすぐに歯の矯正をしたり、歯を失ってしまっていた場所にインプラントを入れたりして見た目をきれいにし、社会的ステータスが上がったことを誇示します。かたや歌手の方は売れてもなかなか歯を治したりしません。それは息の漏れ方が微妙に変わるのでとても慎重にかつ巧妙な調整が必要となるからです。
歌手の方は息の漏れ方1つで歌い方に微妙な変化を伴うことを避けたいと考えていらっしゃるのでメンテナンスにおいても一般の方より頻繁にメンテナンスを行なっています。
さらに歯は上下が揃っていないと身体の歪みにも大きな影響を及ぼします。身体が歪むと肩こりや腰痛などバランスが崩れることでさまざまな弊害をもたらします。
お口の中では、食べ物を噛み砕くことができず消化器官へ負担がかかる他、咀嚼回数が少なくなれば唾液の分泌に影響が出て、口腔内の環境が悪化し歯周病・虫歯へのリスクが高まるので全身疾患につながります。歯並びや顔の印象が変化するなどの問題が生じます。
例えば上の歯がなくて下の歯のみだと下の歯が上の歯茎を押すので歯茎に炎症が起こりやすくなりますし、上の歯があって下の歯がなければ上の歯が間延びしたり、下の歯茎を押して歯肉炎になりやすくなります。
今回ご来院の患者さんには、インプラントは自分の歯を失った際にお勧めしたい1番いい治療方法だということをご説明しました。
歯を失った場合の治療方法
このように表にまとめてみると、インプラントは決して悪い治療ではありません。
患者さんはどうしても「自由診療=高い・歯医者にやらされた治療」と捉えがちですが、
保険診療と自由診療の違いは、医療費の負担と治療内容の規定の有無です。
保険制度と自由診療とは?
保険 | 自由診療 | |
---|---|---|
自己負担 | 30%(20%) | 100% |
治療方法 | 公的保険制度に基づく治療 | 公的保険制度を用いない治療 |
医療費 | 原則3割 | 制限無し |
治療の原則 | 検査や治療方法が定められている | 検査や治療方法 医師個人の努力によって確立されたものを用いて治療 |
良い点 | 国が医療費の7割を負担をしてくてるので自己負担が少ない | 保険診療の規制に囚われることなく自分自身で治療方法を選択できる |
残念な点 | 保険診療の規定があるので治療方法や回数使う材料や 時間などに細かい規約によって自由が効かない |
自由診療は医師個人が学校を終えた後の学びによって提供する技術、 使う材料やくすりなど勉強した分自由に使えるが、どんなに良い治療方法 であっても保険診療制度が使えないので100%自己負担 |
比較してみると、良い点と残念な点が明確になりますが、基本的には自由診療は学びが多い先生によって提供される治療方法でしかありません。
患者さんご自身が医院を選ぶ際に何を基準にされるのか?保険診療に特化した医院がいいのか?保険診療ももちろん自由診療などさまざまな勉強をしている医師に相談をして治療方法を選択したいのか?によるのではないでしょうか?
インプラントも比較してみると、長期間にわたり失った歯を技工物によって元の自分の歯により近づけた形で治療が叶ったという恵まれた治療方法です。
歯周炎はインプラントに限らず日常的なお手入れをきちんとしたり、定期的なメンテナンスさえしっかりしていけば問題はありません。
私は、自分自身が歯を失った時の選択肢はインプラント一択でした、80歳を超えた両親にもインプラントの選択をしました。よく噛めることこそが健康への入り口だからです。
治療方法に迷ったら、まずはご自身の口腔内の検査をして誰の意見かわからない情報を鵜呑みにせず、ご自身の情報を発信元がわかるところで確かめましょう。